極東紀行#6

別海町観光船で行く「野付半島」の旅

Date: 2021/9/19

時代の経過


野付半島の奥にある「トドワラ」。立ち枯れの景色が世紀末を感じさせる場所として有名であり、かつてより多くの観光客を魅了してきました。

私もそんな観光客の一人であり、2012年(平成24年)に初めて来て以来、何度目かの訪問となります。夏にも、冬にも来ている「トドワラ」。それでも久しぶりに見る夏の「トドワラ」は前に来た時と比べて、風化が進み、時代が経過していることを感じさせました。

前回記事の振り返り
初日はあいにくの天気で観光は出来なかったものの、朝風呂と元気の出る朝ごはんで今日の活力を蓄えました。今日は天気が好転しそうなので、旅を楽しみます。
観光船受付

宿からすぐの「観光船」受付に行くと、多くの人が既にチェックインの手続きをしているようでした。宿泊した「うたせ屋」以外にも尾岱沼には数軒の温泉旅館やホテルがあるため、各施設に宿泊した人たちが少しずつ集まっているようです。

受付の事務所内に入り、現金で料金を支払します。割引券を提示すると、どこの宿かというのを聞かれるのでそれに答えました。定価の半額で利用できたので良かったですが、定価は3,200円なので定価で利用するには少しお高めという気はします。

チェックインの手続きをした後は岸壁沿いに歩いて観光船が停まっている場所まで個人個人で移動します。車で移動しても良いようですが、ほんの百メートル、二百メートルなので歩いて向かいました。朝の港町の風を感じながら歩くのはとても気持ちが良いものですからね。

観光船チケット
出港待ち

少し歩くとクルーズ船が見えてきました。この後ろにも同様の観光船が停泊していたので2隻あるようです。今日乗船する船の名前は「パワードリーム」号です。

パワードリーム号

船内は1階に座席があり、また後方部にはベンチシートが設けられたデッキがあります。更に、2階にも立ち席とはなりますがデッキがありました。1階のデッキは席が埋まっていたので、今回は2階に乗船することにしました。

結論から言えば、2階席は風が強く当たるものの、眺望はよく、とても楽しい時間を過ごせたので、割とお勧めではあります。ただ、立ち席で風が強く当たるのと、恐らく1階よりも揺れを感じやすいので、その点は注意が必要そうです。(揺れ自体は湾内でのクルーズでもあり、個人的には大して感じませんでしたが船が苦手な方であれば多少なりとも感じると思います。)

それでは出航までしばし待つことにしましょう。

尾岱沼漁港
出航

8時25分頃に尾岱沼漁港を出発しました。2階デッキの効果と言ってはアレですが、進行方向の景色を存分に楽しめるので、港を出ていく様子がとてもよく分かります。

漁港内では当然のようにゆっくりと航行をしますが、それでも朝の冷たい風があたり、どうも目を覚ましてくれるようなそんな気がしました。

尾岱沼の観光船にはいくつかのルートがありますが今回乗船したのは「トドワラ往復」のコースで、野付湾内のみの航行となります。他に国後島ウォッチングツアーなども設定があるようですが、2021年9月現在は新型感染症の影響により行われていないようです。

ここで、野付湾(尾岱沼)について簡単にご説明しておきます。

野付湾(尾岱沼)

野付湾は北海道東部にある根室海峡に面する湾。野付半島に囲まれるように位置し、南側に開けており、南側では根室湾と接しています。

湾内の水深は最深部でも約4メートルしかなく、厳冬期は湾内が結氷します。また、野付半島自体が砂嘴であるように、湾内にも堆砂による浅瀬や湿地・小島などが各地にみられます。

野付湾に浮かぶ島

先ほどまでは快晴だったような気がしたのですが、北側の雲が南下して、やや曇り空気味のクルーズです。

尾岱沼漁港を出発して最初に目にするのは野付湾に浮かぶ標高のかなり低い島「新所の島」です。このように堆砂による小さくて浅い島や浅瀬が各地にあるため、野付湾内のクルーズはルートがかなり限られているようです。

さて、野付湾内の自然も勿論気になるところではありますが、この野付半島は北方領土である国後島が非常に近いため、国後島を肉眼でくっきりと眺めることが出来ます。

先日、野付半島付け根の標津町に国後島から密入国(亡命)した人が来たのも記憶に新しいところです。

野付半島と国後島

さて、航海を続けていきます。しばらくすると海に動く動物らしきものがいるではないですか。船長からのアナウンスも入り、「船の前方にアザラシがいます」といったアナウンスをかけてくれます。また、アザラシスポットではしばしの停泊をしてくれるため、ゆっくりとアザラシ観察をすることが出来ます。

肉眼ではたくさんのアザラシがいたのですが、どうも海の中に隠れる子たちが多く、くっきりとカメラにおさめるのは難しかったです。写真ではなく記憶にとどめるのが一番なのかもしれません。

アザラシ

アザラシタイムも終わり、船は目的地である「トドワラ桟橋」へと向かいます。そして、9時頃にはこちらの「トドワラ桟橋」に到着しました。水深が浅いせいか長い桟橋が組まれているのが分かります。

この後、着岸して桟橋を渡って、陸地に上陸します。

トドワラ桟橋
トドワラ散策

無事に桟橋に着岸したので、下船します。緑色の目立つ桟橋を歩いて、野付半島の砂嘴へと向かいます。なお、この桟橋自体はほとんど揺れないので、そういった心配はする必要はなさそうです。

桟橋を渡って、砂嘴に到達すると少し驚き。トドワラには木道が整備されているので、てっきり木道と接続しているのかと思っていたのですが、木道とは接続しておらず、木道までは砂嘴を歩いていくスタイルのようです。

なかなか歩きづらい道が続くので、(ヒールなどで来る人はあまりいないと思いますが)足元には注意が必要です。

木道に辿り着いてから「トドワラ」方面を眺めてみます。ここには初めて来た2012年(平成24年)以来、何度か訪れていますが、年々風化が進み、残された枯れ木などももう僅かになってきました。

トドワラ(手前)

ここで、トドワラについて簡単に説明をしておきます。

トドワラ

野付半島にある「立ち枯れたトドマツ林の跡」のこと。元々は砂嘴上にあったトドマツ林が海水面の上昇や地盤降下により立ち枯れたことにより成立。年月の経過に加えて、低気圧などの影響により、風化が進んでおり、残されたトドマツ林の跡はごくわずかとなっている。

野付半島には「トドワラ」の手前に立ち枯れたナラマツ林の跡である「ナラワラ」もありますが、こちらの方が風化の進みが遅く、現在でも立ち枯れた様子を見ることが出来るようです。

2013年当時のトドワラ
2014年当時のナラワラ
アクセス

今回利用した尾岱沼からの観光船を利用するほか、野付半島ネイチャーセンターから遊歩道が整備されているため遊歩道を伝ってくることも可能です。

桟橋から歩くこと10~15分で「トドワラ」に到着します。時代の経過とともに、枯れ木の跡がごくわずかになってきていることがわかると思います。一方で、枯れ木がなくなっているがゆえに、冬の野付半島を代表する「氷平線」がより綺麗に見えるようになっているのかもしれません。時は止めようがなく、前に進むのです。

トドワラ

それでも所々に枯れ木の跡がしっかりと残っていることが分かります。これは場所によって風化の進み具合が異なることによるものですが、いずれはこの枯れ木の跡も見れなくなることでしょう。

枯れ木の跡

間もなくして、木道の終端部に辿り着きます。終端部付近が一番枯れ木が残っている場所になります。

木道の終端部

参考までに2014年当時の様子も載せておきます。

2014年当時の様子

風化の進み具合がよく確認できるかと思います。

終端部まで訪れた後折り返して桟橋に戻ります。途中で桟橋方面とネイチャーセンター方面の分かれ道があり、ネイチャーセンター方面への分かれ道を進むときれいなトイレがあるので、トイレに寄ろうと思い進んでみたのですが、トイレが閉鎖中になっており、入ることが出来ませんでした。

トイレは使えませんでしたが、「トドワラ」と書かれた柱が立っているので、一枚写真だけ撮っておきます。

トドワラ
帰路

さて、帰りの船の出港時間も近づいてきたため、桟橋へと戻ります。砂嘴を歩いて戻りますが、湾内ということもあり、水面は穏やかであり、とても美しい景色が広がっていました。

桟橋

帰りもゴマフアザラシがルート上に現れたので、また船を停泊してゴマフアザラシを観察させてくれます。往路に見た時よりも、海から顔を出している時間が長かったので、ゆっくりと写真を撮ることができました。

アザラシ

帰りは2階のデッキも混み合っていたので、1階の客室部分でゆっくりと過ごしました。約30分ほどで尾岱沼漁港へと戻ってきました。出発した時と比べても、明らかに天気は好転しているようでした。

短いクルーズではありましたが、女将が言うように、「ゴマフアザラシもしっかりと見ることが出来」、「トドワラの散策も出来」、と割と充実度の高いクルーズでした。

トドワラと比較して、枯れ木の残っているナラワラに行けないため、ナラワラも行こうとすると、クルーズと別に野付半島まで行かなければならないというのはあるものの、それ以外は野付半島の魅力を十分に楽しむことが出来るため、初めての野付半島旅行をされる方にも間違いなくお勧めできます。

別海町観光船

住所

〒086-1643 北海道野付郡別海町尾岱沼港町232

公式サイト

http://www.aurens.or.jp/~kankousen/

次回予告
観光船の後は根室湾沿いに根室市へと向かいます。
根室までの道中には、どんな見どころがあるでしょうか。

旅行記「極東紀行」