留萌本線乗車記(深川→留萌)
Date: 2021/7/23
鉄路の行方
危機を迎える北海道の鉄道網
新型感染症の影響により旅客需要が大幅に減少し経営危機に近い状態となっている旅客各社。JR北海道もその一つですが、北海道に関しては新型感染症の影響以前より、各線区の赤字により経営難に近い状況となっていました。
こうした状況を踏まえ、路線の整理を行っていて、この5年間でも、江差線(木古内~江差)・留萌線(留萌~増毛)・石勝線(新夕張~夕張間)・札沼線(北海道医療大学~新十津川)・日高線(鵡川~様似)の5線区を廃止しています。
上記に加えて、各路線の利用状況に応じて、「自社単独で維持可能な線区」・「単独では維持不可能な線区」を発表し、後者のなかでは「バス転換を前提とする線区」・「自治体等との協議により存続を目指す線区」と区別しています。
廃止が予定されている留萌本線
今回乗車する深川~留萌間の留萌本線は「単独で維持不可能」であり「バス転換を前提」としている路線となっていて、つまるところ廃止が予定されている路線です。
ちなみに、留萌本線が廃止となると留萌振興局内の鉄道はすべて廃止となり、檜山・日高に次ぐ3振興局目の「振興局内に鉄道を有さない振興局」となりますが、市を有する振興局で鉄道を有さないのは留萌が初めてとなります。
起点駅
留萌本線のはじまり
留萌本線は1910年(明治43年)に良港・留萌と(炭鉱が盛んな)空知地方を結び、石炭・木材・海産物の輸送を行うこととして開通した路線です。
かつては留萌より先・増毛までを結んでいたほか、留萌から北に苫前・羽幌を経て幌延へ至る「羽幌線」という支線も有していましたが、いずれも廃止され、現在は深川~留萌間のみが存続しています。
本日乗車する列車は深川駅を11時10分に出発する普通列車の留萌行きです。発車案内をみていただけると分かると思いますが、札幌駅10時発の特急と4分で接続しており、割と利便性は高く維持されています。
札幌~留萌間の公共交通
ここで、参考情報として札幌~留萌間の公共交通事情について触れておきます。
北海道中央バス「高速るもい号」
札幌~留萌間を結ぶ高速バスで1日7往復(調査日時点では新型感染症の影響で2往復減便中であり5往復)運行されています。札幌駅前~留萌ターミナル間の所要時間は2時間39分~2時間50分で結んでいます。
沿岸バス「高速はぼろ号」・「特急ましけ号」
札幌~羽幌・豊富間を結ぶ高速バスが「特急はぼろ号」で、派生型で札幌~留萌間を石狩市経由で結ぶバスが「特急ましけ号」です。運行本数は「はぼろ号」が5往復(調査日時点では新型感染症の影響で3往復減便中であり2往復)、「ましけ号」が1往復(調査日時点では運休中)設定されています。所要時間は「はぼろ号」が札幌駅前~留萌元川町間を2時間14分、「ましけ号」が札幌駅前~留萌駅前間を2時間46分で結んでいます。
函館本線特急・留萌本線乗り継ぎ
今回利用した特急と留萌本線の乗り継ぎルート。留萌本線は一日7往復設定されていますが、朝の下り始発便は札幌からの乗り継ぎが出来ないため、札幌~留萌間の移動としては6.5往復が利用できます。所要時間は深川駅での乗り換え時間が列車により異なるため、列車による差が大きいものの、2時間6分~2時間33分となっています。
札幌発・留萌発のいずれについても、始発・最終の公共交通アクセスはこのルートとなっているので、その時間も合わせて紹介しておきます。なお、時刻は2021年8月現在のものです。
札幌発留萌着の始発・ 最終 便
【始発便】札幌駅6:35→留萌駅8:55(ライラック1号→留萌本線乗り継ぎ)
【最終便】札幌駅19:00→留萌駅21:11(ライラック37号→留萌本線乗り継ぎ)
留萌発札幌着の始発・最終便
【始発便】留萌駅5:49→札幌駅8:26(留萌本線→カムイ6号乗り継ぎ)
【最終便】留萌駅20:20→札幌駅22:53(留萌本線→オホーツク4号乗り継ぎ)
跨線橋を渡ってホームへと向かいます。跨線橋はレトロ感があります。
乗車する列車
ホームには既に車両が停まっていました。留萌行きは1両編成で運転されるそうです。なお、カムイ号が到着したときに同じホームに停まっていたのも同じ車両ですが、あちらは旭川行きの普通列車でした。
車内に入ってみます。乗車した時点では他のお客さんは1人でしたが最終的には窓側席は埋まっていました。発車の直前に到着した特急「ライラック」から乗り換えるお客さんが多かったようです。
進行方向左側はブラインドが下がっていたので、右側の窓側席を確保して、列車の発車を待つことにします。
留萌への旅路
空知を駆け抜ける。
深川駅の自動販売機で「綾鷹カフェ(抹茶ラテ)」を購入したので、こちらを旅のお供とします。「綾鷹カフェ・抹茶ラテ」に加え、「クラフトボス・抹茶ラテ」と最近は抹茶ラテ飲料が流行りのようで、抹茶ラテ好きにはたまりません。
深川を出発した列車は、北空知の街・秩父別と沼田町を経由して留萌市へと至ります。北空知地域は農業が盛んな地域なので、車窓には田畑が広がっています。
車窓からは時より「深川留萌自動車道」を見ることができます。ほぼ全区間が無料開放されている高速道路で、留萌地域と道内各地を結ぶ要の道路となっています。自動車道の整備と鉄道の後退というのはよく言われるものですが、並行の国道もそれなりには快適であって、高速道路が出来ようが出来まいがあまり関係のないように思えます。ただ、古い鉄道や古い道路と異なり、新しい道路は災害時にも強さを発揮してくれるので、その意義は大きいでしょう。
深川を出て15分で石狩沼田駅に到着します。この石狩沼田駅はかつて札幌駅から札沼線も通っていて、分岐駅であったそうです。地元自治体のなかでは、深川から石狩沼田駅までの区間については、学生の利用も多いということで、存続を目指す動きもあるようですが、JR側は全線廃止を主張しています。そして、実際のところ、バスで代替可能な輸送量であれば、短区間のローカル輸送のために鉄道を存続させるというのはあまり合理的でないような気がします。
恵比島峠
石狩沼田駅の次が「恵比島駅」です。乗車していたのと反対側に駅舎があったのですが、やたらとレトロだったので、ついつい写真を撮ってしまいました。調べてみると、かつてテレビドラマ「すずらん」の舞台として使われたそうです。
恵比島駅を過ぎると恵比島峠を経て留萌市へと入ります。車窓はこれまでの田園地帯から変わり、山あいをゆっくりと走ります。山あいを駆け抜けるというには少しゆっくりな気がしますが、それでも力強く峠越えをしていきます。
峠を越えた後は留萌駅のある市街地直前までのほとんどの区間が留萌川沿いに谷あいを進んでいきます。小さな集落がいくつかあり、集落内に設けられた駅に停まっていきます。
留萌駅の一つ手前・大和田駅を過ぎ、少しすると留萌の市街地に入ります。市街地内に留萌駅以外の駅はなく、留萌川を越えると間もなく終着・留萌に到着します。
留萌の玄関口
広かった駅構内
上でも記載したように、かつては留萌駅から増毛方面・羽幌方面・留萌港方面へと分岐していた駅だけあり、広大な敷地を有していました。現在も鉄道用地として残っている部分は僅かであるものの、かつて広大な敷地を誇っていたことを感じさせてくれます。
留萌駅に定刻通り到着。深川からの所要時間は57分です。駅に降り立って見えた跨線橋の乗換案内には「増毛方面」の文字がありました。恐らく二度と点灯することはないのでしょう。なお、さすがに羽幌方面という表記は残っていないようでした。
小さくなってもまだまだ立派な玄関口
現在の留萌駅は写真のように、ホームが2つしかなく、そして実際に使われているのが駅舎側のホーム1つのみとのこと。
振り返って駅舎の方を見てみると、改札の横には「留萌市へようこそ」と書かれた大きなパネルが設置されていました。駅構内に長居しても迷惑になるので改札の方へと向かいましょう。
改札を出ると、列車を待つ人たちがいました。すぐに折返しの深川行きとして出発するため、その列車に乗るお客さんたちが集まっているようです。お昼どきの賑わいとでもいうのが正しいのでしょうか。
駅舎の外は歩いている人こそ多くないものの、待ち合わせの車だったりでやはり賑わっていました。そして振り返って見える駅舎は2階建ての立派な駅舎で、かつての賑わいを思い起こさせてくれます。
留萌からは羽幌へと沿岸バスを利用しますが、発車まで少々時間があるため、駅前の飲食店に入って、お昼ごはんをいただくことにします。
次回予告:留萌駅前グルメ×羽幌線転換バス
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