アルプスの恵み#4

黒部の水が生み出すもの

2024/8/11

北アルプス交通(信濃大町駅→扇沢駅)

【所定時刻】信濃大町駅7:10→扇沢駅7:50

昨夜は一軒のみで帰ってきて、そして途中にコンビニもなかったので、晩酌もしなかったので、なかなかに快眠できました。

2日目の今日はついに立山黒部アルペンルートへ向かいます。朝起きて、窓の外を見ると、雲がほとんどない快晴。午後は天気が悪くなっていくようなので、朝早めの出発にしておいてよかったです。

朝食は1階のレストランでいただきます。季節限定で営業開始時間が早まっていましたが、その営業開始時間に行っても、既に食べ終えている人がいたので、かなり早めに営業を開始しているようです。山に行く人は朝が早いから、嬉しいですよね。お昼ご飯も混雑していてなかなかありつけないかもしれないので、朝からしっかり食べておきます。

食後は身支度して、信濃大町駅前のバス乗り場から出発する「扇沢駅行き」のバスに乗車します。朝の早い便ですが、信濃大町駅を出発する時点でも、通路側席もそれなりに埋まっていました。

バスは大町市内から徐々に北アルプスの方面へと近づいていきます。途中の大町温泉郷ではかなりの乗車があり、積み残しも発生していました。積み残しの人数確認をしていたので、代替輸送なども手配してくれるのでしょうか。バスに乗れないとこの先の行程にも大きく影響すると思われるので、他人事ながら心配してしまいます。

関電トンネル電気バス(扇沢駅→黒部ダム駅)

扇沢駅にはほぼ定刻通りに到着。まずは、Webで事前予約していた「立山黒部アルペンルートきっぷ」を受取機で発券します。当日発売などの有人窓口は混雑していましたが、Web予約の発券機はガラガラですぐ発券できました。差があり過ぎるので、Web予約が大変お勧めです。

予約していた8時30分までは時間があったので、駅の写真やよくブログやYouTubeで見かける「扇沢駅」の看板などを撮ったりして過ごしました。それでも、2階の改札前に上がった時点で、一本前の8時発が出発していませんでした。2階にはバスをモチーフとした記念撮影用のパネルなどが置かれています。特にやることもなかったので、乗り場の前に並んで待つことにしました。

30分弱の待ち時間、さすがに退屈と言えば退屈なのですが、ときよりフロア内の売店の方がユーモアあふれる営業トークを披露してくれるので、笑いもあり、で場の空気が良い雰囲気だったので、苦にはなりませんでした。

改札が始まると、階段を上がって、電気バス乗り場に向かいます。乗り場ではバスが何台も連なっており、見えない前の部分にもバスが停まっていますとアナウンスで前に行くよう促されます。私は先頭から2台目のバスに乗車。最近のバスらしく、前方の良く見えるオタク席はありませんが、左側最前列に着席できました。

手前にあるタイヤの上の台は荷物を置かないようにと書かれていて、かつ、前方ドア前は突っ張り棒で行けないようになっていたので、この席に座ったことで前面展望が少し遠いながらもよく見ることができました。

さて、バスは定刻通りに扇沢駅を出発。間もなくして全長5.4kmに及ぶ「関電トンネル」に進入します。トンネルは単線で、トロリーバスの名残の架線の跡が残っています。トンネル内最大の見どころは「破砕帯」です。

1956年8月に始まったこのトンネル工事は月進300mを超える記録的なスピードで進んでいましたが、翌1957年5月、扇沢側から1.7km進んだ地点で、最大毎秒660リットルの地下水と大量の土砂が噴出する破砕帯に遭遇しました。

一時はダム建設が危ぶまれる状況となったものの、技術者の執念と努力によって、地質調査・軟弱地盤の固化が試みられ、7か月後の12月、ようやく破砕帯の終わりを告げる固い岩盤に到達。この80mの苦難を乗り越えたことで、翌年、この関電トンネル(当時は大町トンネル)が貫通したのです。トンネル内の破砕帯を通過する際はアナウンスが流れるほか、その区間が青く照らされており、場所がよく分かるようになっています。

破砕帯を通過して少し進むと、長野県・富山県の県境に到達。この県境の少し先にある「貫通点」を含む区間では、電気バスの行き違いが行われているため、2車線になっています。

扇沢駅から約16分で、黒部ダム駅に到着。駅はトンネル内にあり、バスが周回して折り返せるようなロータリー構造になっています。この黒部ダム駅から展望台までは約200段の階段を上りますが、冷気が立ち込めるトンネル内なので、夏でも涼しく快適に上ることが出来ます。

黒部ダム(黒部川第四発電所)

階段を上りきると「ダム展望台」です。ここからは巨大な黒部ダムとダム湖を眺めることができます。黒部ダムは、堤高186mで日本のダムとしては最も高さのあるダムで、ダム湖である黒部湖は総貯水量2億トンの巨大なダムです。

黒部ダムというと、アーチ型ダムのイメージが強いですが、アーチ型だけでないのが黒部ダムの特長なのです。ダムの左右にあるウイング部分は重力式ダムとなっていて、ダムの安全性を高めています。これは建設途中の1959年、フランスで起きたアーチ型ダムの決壊事故を受けて、両岸の基礎となる岩盤を調査したところ、亀裂が見つかり、予想以上に脆いことが判明したため、両岸付近のウイング部分を重力式ダムとして、ダムをしっかり支える構造にしたのです。

この展望台からは黒部ダムと黒部湖を一望できるので、200段登ってきた甲斐があると言えるものです。展望を楽しんだ後は、破砕帯の水も飲んでみます。破砕帯の水は、キンキンに冷えた北アルプスの水ですから、言わずもがな、当然のように美味しいです。

展望を楽しんだ後は、展望台からダムサイトまで下っていきます。途中にはコンクリートを運搬したバケットなども展示されています。眺望を見るだけでも十分な観光ですが、171人の殉職者を出して完成にこぎつけた黒部ダムの工事史を知ってから来ることで、深みが何倍にも増されるものです。

ダムサイトよりさらに下、「新展望広場」まで下ってきました。この新展望広場は屋外に設置された「外階段」の最終地点にあり、大迫力の放水を間近で楽しむことが出来ます。また、一番上の展望台でも虹を見れますが、下ってきた新展望広場が最も虹が見えやすいようです。

広場内には「特設会場」と称した展示スペースがあり、ここでは黒部ダム建設の歴史をパネルや映像で学ぶことが出来るようになっています。

黒部ダムの展望を十二分に楽しんだ後は、階段を上がって、ダムサイトへ向かいます。このダムサイトには「黒部ダムレストハウス」があり、ソフトクリームや名物・黒部ダムカレーを食べることが出来ます。まだお昼には早いので、今回はレストハウス内の売店で「ハサイダー」を購入しました。

この「ハサイダー」は、先ほど通過した関電トンネル内の破砕帯の水を使用したご当地サイダーです。味は甘すぎず、すっきりとしていて、甘いサイダーが苦手な人でも飲みやすいです。

空き瓶をしっかりごみ箱に捨てたら出発です。ダム上の道をゆき、対岸にある「黒部湖駅」へと向かいます。ダムの長さは492mあるので、のんびりと歩いて向かいます。このダム上からも美しい黒部湖や直下から眺める放水アーチなど見ていて飽きない景色が続いていました。