ここにある水と、ここにない塩
2024/8/10
男清水と女清水
信州蕎麦をいただいた後は、大町市内を散策します。駅に併設の観光案内所でいただいたマップに書かれていたルートに従って、駅前の本通りから少し脇道に入っていきます。脇道沿いにも商店や飲食店もあるようです。また、夜のお店もこのあたりに集中しているようです。歩いていると、立派な大木が見えてきました。
この立派な木があるのは、「皇太神宮・西宮神社」です。立派な木に加えて、木製の味がある鳥居と、竹から流れる清水が、いい雰囲気を出しています。
ここの清水は女清水、とのこと。そうそう、大町市には色々なところに清水を飲める場所がありますが、本通りを境に西側は「北アルプス白沢の湧水」が使われている「男清水」、東側は「東山の居谷里という池の湧水」が使われている「女清水」と呼ばれているそうです。
これは、かつて、西の集落は男の子ばかりが生まれ、東の集落は女の子ばかりが生まれたことから来ています。もちろん、それでは(昔は)困るということで、両方の水を合わせて流し、川の両側で幸せに暮らすようになったと言われています。
合わせて、と言うと、このお宮もまた同じです。元々、この地にあった屋敷の外れに伊勢神宮(皇太神宮)が祀られていましたが、地域の人々が商売繁盛で名高い西宮神社を勧請し、2つの神社を合わせてお祀りしたお宮なのです。
塩の道ちょうじや・流鏑馬会館
先ほどの「皇太神宮・西宮神社」をもう少し進むと、立派な瓦屋根の建物がみえてきます。こちらは、「塩の道ちょうじや・流鏑馬会館」です。
写真の建物は国の登録有形文化財にも指定されている旧・平林家で、母屋と後から紹介する蔵群により構成されています。1890年(明治23年)に建築された母屋では、当時の生活をうかがう梁組や帳場などを見ることが出来ます。また、平林家は庄屋であり塩問屋を営んでいたのですが、蔵群のなかでも塩蔵は当時の様子がよく分かる状態で残されている貴重な建物となっています。
館内に入り、入館料を払うとスタッフの方にこちらの施設を簡単に解説していただきました。実はこの入ってきた通路から特徴があるんだそうです。塩を運んできて、そのまま屋内に入ってこれるような造りになっているとのこと。なるほどよく考えられた造りです。
解説を聞いたあとは、帳簿や往時の様子を再現した模型をみて、2階に上がります。2階の窓は空いていて、爽やかな風が吹いています。この真夏で、この涼しさの天然の風が吹くなんて、さすがは北アルプスの麓です。
2階の展示は「塩の道」の解説がメインのようです。「塩の道」とは、越後国糸魚川から、大町を経て、信濃国松本・塩尻へと結ぶ街道筋「千国街道」の別名です。日本海沿いの糸魚川から塩や海産物を運ぶために用いられたことからこの名で呼ばれています。
塩などの運搬は、牛馬や歩荷によって行われ、ここ大町は千国街道の宿場町の重要な拠点として栄えました。この建物からもその往時の繁栄を感じ取ることができます。
母屋の次は蔵群を見学します。江戸から明治にかけて建てられた3つの蔵(文庫蔵・漬物蔵・塩蔵)があり、なかでも「塩蔵」には、保管した塩から滲み出る「にがり」を溜める「にがりだめ」の構造が往時のまま残っているとても貴重な蔵です。1869年に、元々あった土蔵(のちの文庫蔵)と一体となるような形で漬物蔵・塩蔵が増築され、一つの土蔵となっています。
蔵群向かいには「流鏑馬会館」もあります。大町市の若一王子神社で行われる流鏑馬は、少年が馬上の射手を担うという珍しい流鏑馬ですが、京都・加茂神社および鎌倉・鶴岡八幡宮と共に「三大流鏑馬」と称されています。流鏑馬会館では、この流鏑馬と夏祭りに関する資料が展示されていました。
流鏑馬会館を見ていたら、若一王子神社にも行きたくなってきました。
Google mapで調べてみると、歩いて25分ほど。昨年の反省から、真夏のカンカン照りのなかを長時間歩くのは控えていますが、涼しい信州ですし、その程度であれば大丈夫でしょう。水が流れる素敵な小径や昭和の雰囲気を残すアーケード商店街を散策しつつ、若一王子神社を目指します。
途中に立ち寄ったアーケード商店街は「大町名店街」という商店街で、飲食店のほか多くのお店が連なっています。地方の商店街というとシャッター街を想像することも少なくないですが、ここは現役で営業している店舗がほとんどのようでした。飲食店も夜のみのお店もありましたが、昼から繁盛しているお店もあって、なかなかに賑やか。夜にじっくり楽しむのもいいかもしれません。
若一王子神社
折角なので「一の鳥居」から参拝することにします。立派な「一の鳥居」から100メートルちょっと進むと、境内に到着します。
この「若一王子神社」は、先ほど流鏑馬会館で学んだように「流鏑馬」が有名なのですが、鳥居と三重塔が併存しているように、「神仏習合」の形を今なお残していることも特徴の一つです。明治維新の折、廃仏毀釈がが進むなか、それぞれの建物の間に小さな土手を築き、神社と寺院が「別物」であると説明したことで、この形が現代に残せたとのこと。その言い訳のような説明で本当に通じるのか甚だ疑問で、当時のお役人さんからお目こぼしいただいただけなのでは?と思ってしまいますが、何はともあれ今に残していただいたわけです。
鳥居をくぐり、まずは本堂をお参りします。本堂の前には流鏑馬を描いた巨大な絵馬が置かれています。その後、お隣にある「観音堂」もお参りして、おみくじをひきます。
久しぶりのおみくじ、結果は「大吉」。ただ、その大吉より嬉しかったのは、「おみくじ」の「旅行 楽しき旅になる」の一言でした。まだ始まったばかりの旅ですが、楽しい旅にしたいものです。
北アルプスブルワリー
楽しい旅には、やっぱり美味しいご飯と美味しいお酒。大町市には3つの酒蔵がありますが、今日は酒蔵ではなく、地ビールレストラン「北アルプスブルワリー」にやってきました。
店内に入り、「選べる3種飲み比べ」と「フライドポテト(ガーリックバター)」を注文。3種飲み比べは、「ペールエール」・「IPA」・「八方アルペンエール」を選択しました。
この北アルプスブルワリーは、大町市のおいしい水を使った地ビール。ビールは目の前に注ぎ口があり、そこから注いでくれます。やってきた3種のビールは、それだけでももちろんおいしいですが、ガーリックバターを載せたフライドポテトが横にあると、あっという間に減っていきます。
これでは、ポテトが余ってしまうので、追加で3種飲み比べを注文します。今回は「ラガー」、「ヘイジーIPA」、「安曇野フルーツエール」を注文。安曇野フルーツエールは単品だとお高めですが、それも含めて、飲み比べが出来るなんてなかなか太っ腹です。フルーツエールはかなりフルーツ感があったので、好みは分かれそうですが、長野・安曇野を感じるという意味ではいいビールです。
もう一回、「選べる3種飲み比べ」をオーダーすれば、全部制覇出来るな!とは思ったものの、夜も楽しみたいので、今日は2セットにして、お店を後にして、ホテルに向かうことにしました。夜は料理のメニューも豊富なようなので、またいつか夜にも来てみたいところです。